侯爵夫人に預かった若者だが、そんなに放蕩にふけっていて大丈夫なのかと心配になった。
せっかく侯爵夫人のもとを離れ、愛玩としての役目を免れているのだ。
この屋敷にいるうちは厳しく接し、生きる術を身に付けさせたほうが彼の今後のためなのではないかという気がしてきた。

そこまで骨を折る必要はないといえばないのだが、素直な性格のようだし、なんだかこのまま終わるのがかわいそうになってくる。
若いうちはいいが、その美貌が衰えてしまえば必要とされなくなってしまうだろう。

一度、真剣に話をしてみようか。

「僕だって、なにも考えていないわけではありません。」

姿勢を正してわたしの前に立つ。

「家督は兄が継ぎますし、僕は僕で身を立てないといけないんです。侯爵夫人のもとにいたのは、そうしなければ生きていけないからです。でも、いつまでもこのままでいいとは思っていません。」

いつになく真剣な表情に、わたしも心を打たれた。
若者が自分の道を見つけるチャンスを与えられないのは不幸なことだ。

さすがファッションリーダーの侯爵夫人のもとにいただけあって、この若者はオシャレだし気が利く。
詩を引用した教養ある言葉も使えるし、ふさわさい場に出れば、それが生かせることもあるだろう。

知り合いを当たってみて、もしいいところがあれば頑張って働くかと聞くと、若者は目を丸くした。

「働くなんてとんでもない。あくまで、貴族としての対面を保ちつつ、です。なので、どこか金持ちの女と結婚するとか、いろいろあるでしょう。」

分かっていませんね、という顔をされた。

最悪だ。

 

 

 

 

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 最終更新日 2016/01/31

 最終更新日 2016/12/25