「見ろよ、侯爵夫人だ。イカした女だなぁ。」
夫の友人が、遠くで談笑する侯爵夫人を見て、夫のひじをつついた。
夫のところへ戻るところだったわたしは、邪魔をしてはいけない、と二人に背を向けて、給仕からグラスワインを受け取った。
友人である侯爵夫人が、こうした夜会で男性から賞賛の目を向けられるのは、いつものことだ。

それに対して夫は、
「その言葉は古いぞ。それにあれはイカした女じゃない。イカレた女だ。いや、ほぼ男だ。あれを女だとは認めん。」
冷たく切り捨てた。

こふ、とむせそうになった。
侯爵夫人に対する夫の評価は今まで聞いたことがなかったが、もしかして仲が悪いのだろうか。
たしかに侯爵夫人も、夫に対する辛辣な言葉はたまに飛び出すことがある。それでもお互いに認め合っているのだろう、と思っていたが。

「あー、あれか。お前の夫人を通じて、ちょっかいをかけてきてるって?夫人同士仲が良いから、そうむげにもできないだろ。それに、侯爵とは協力しあってるんじゃないのか?」

「侯爵は立派なかただ。夫人も、侯爵が手綱を握っているうちはまだいいがな。すぐに手綱を引きちぎって暴走しようするし、どうもやり過ぎるきらいがある。侯爵夫人の通ったあとには草も生えない。」

「どんだけだよ。」

わたしはそっとその場を離れた。

今まで聞いたこともなかったが、勝手に夫と侯爵夫人は仲が良いのだと思っていた。
どうしてだろう、と考えて、二人が似ているからだと思えた。
二人とも着道楽でオシャレが好きだし、社交的。
それに自信に溢れていて、自分の意見をはっきり言う。
わたしが二人にひかれるのは、そうした、わたしにない部分を持っているからだと思う。

うん、二人はよく似ている。

 

 

 

 

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 最終更新日 2016/01/31

 最終更新日 2016/12/25