「あ、これ。」
コンビニで、浅井があるお菓子の前で立ち止まった。
「チョコ?」
「そう。バヤシが好きって言ってたんだよなぁ。」
その名に、俺の眉がぴく、と動いた。

バヤシ――神林とは、浅井の後輩の女子社員で、彼女が入社当時、浅井が教育係を務めていた。
俺も何度か一緒に飲みにいったことがある。

最近、浅井の口から神林の名前が出ることが多くなった。
「あんまり売ってないって言ってたから、買ってってやろうかな。」
浅井がお菓子を手に取り、レジへと向かった。

その背中を見ながら、これ以上は待てないな、と考えていた。

神林の気が済むまでと待っていたが、彼女はなんの行動も起こさなかった。
その間、浅井は合コンに顔を出していたし、いまも新入社員の谷さんとメールをしている。少し前に、谷さんとどうなのか質問したら、まんざらでもない顔をしていたのだ。

浅井は友人としてはいい奴だが、男としては優柔不断なところがある。

そんな男に、神林を任せておけない。

 

 

 

 

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 最終更新日 2016/01/31

 最終更新日 2016/12/25