屋敷に帰ると慌てて出迎えにきた侍女に心配の目を向けられるが、ぐったりとジェラールに抱えられるままだったベルは、声をかけることもできず、そのまま寝室へと運ばれた。

ベルがシーツの中に入ると、ジェラールは無言のまま寝台の端に腰かけた。

ジェラールになにか声をかけようとしたが、言うことが浮かんでは消えていった。

二人は無言のまま、しばらく時間を過ごした。

口火を切ったのはジェラールだった。

「考える時間が必要‥‥か。たしかにそうだな。」

最初はなにを言われたのか分からなかったベルだったが、その意味を理解すると、じわじわと恐怖が襲ってきた。

「先走りすぎたようだ。ベルの気持ちを聞いていなかったな。」

どくんどくんと心臓の音がうるさくて、身体が金縛りにあったように動かない。

続く言葉を聞くのが怖くて、耳をふさぎたいというのに。

「少し離れて、考えてみるか?」

ぼろぼろと涙がこぼれてきた。

シーツを頭までかぶって、いやいやと首を振ったが、ジェラールには見えていないだろう。

のどが引き絞られて、声を出そうとしても嗚咽しかこぼれてこない。

「改めて、選べばいい。」

寝台にかかっていた重みがなくなった。ジェラールが立ち上がったのだ。

ジェラールの中では、すでに結論が出ているのかもしれない。

ベルを手放す、という結論が。

(違う、違うんです。今が嫌だから、屋敷を出て行ったんじゃないんですっ!)

ごめんなさい、ごめんなさい。

だから、許してください。

以前のように、戻りたいです。

頭の中で言葉を繰り返しているうちに、ジェラールは寝室から姿を消していた。

 

 

 

 

前の話へ   目次   次の話へ

 最終更新日 2016/01/31

 最終更新日 2016/12/25