ベルは夜中に悶々としてしまい、寝台の中で眠れずに身体の向きを変えたりしていたが、どうしても眠れない。

昼間、パメラから聞いたことを思い出していた。

仲良くなりたいのだが、どうしたらいいかという相談に、意外にもパメラは真剣に答えてくれた。

待っていては駄目だ、と。

会うことが難しくても、無理やりにでも話し合う機会を設けなければ。

こうなったら、ジェラールの寝室へ忍んで行ってしまおうと心に決めた。
しかし、決めたものの二の足を踏んでしまい、実行したのは、決心した日から三日経ってからだった。

部屋の前には護衛がいたが、ベルの姿を見ると、静かに扉を開けてくれた。

恥ずかしくて顔から火がでそうだったが、顔を伏せて足を動かした。

暗くて部屋の全体は分からなかったが、その部屋はシンプルな作りで、寝台くらいしか置いてなかった。

そろり、とベッドに近づく。

ジェラールは、寝台にあおむけで眠っていた。
瞳が閉じられ、すっきりとした鼻筋を月の淡い光が照らしている。

なんだか、寝台に近づくごとに、温かくなっているように感じる。
人から放出される熱だろうか。
人の気配がする部屋というのは、なんて落ち着くんだろう。

ふらふらと、足が自然と動いた。

寝台の横に立った。

そのまま腰をかがめて、顔をジェラールに近付けた。
ジェラールの呼吸音が聞こえる。

寝台に手を置いて支えているが、段々と疲れてきた。

シーツをめくり、するりと足から潜り込んだ。

身体が触れないように気をつけて、あおむけに横になる。

顔だけを横に向けて、ジェラールを見た。

起きた様子はない。

しばらくそのまま身体を硬直させていたが、次第に身体の力を抜いた。

そして、もう少し近付く。

今度は手の甲がジェラールの腕に触れた。

ジェラールの呼吸は安定していて、ちらりと横目で見ても起きている気配はない。

ベルは横向きになり、じっとジェラールの横顔を見つめた。

その視線が、唇に向かった。

この唇と、キス、したのだ。

あたたかくて‥‥柔らかくて‥‥。

ベルはジェラールの肩に額を付け、瞳を閉じた。

この場へ来てしまったが、ここからどうするかは決めていない。

ジェラールを起こそうか、それとも、こっそりこのまま部屋に戻るか。

考えようとするのだが、この安心する大きな肩に触れていると、頭を働かせるのが難しい。

手をそっと太い二の腕に添えて、声が漏れないように気をつけながら、うふふっと唇を綻ばせた。

久しぶりに触れるジェラールの肌が、あったかくて心地よい。

このまま眠ってしまいそうだ、と意識が沈みかけたとき、腕が動いた。

目を開けると、ジェラールが目を開けて、横を向き、ベルと向き合う姿勢になった。

「ベル、愛している。結婚してほしい。」

唐突な求婚だったが、ベルは自然に頷いていた。

ジェラールはベルをぎゅうと抱きしめた。

「駄目だな、物語のヒーローのようにプロポーズするつもりだったのに。」

また改めてプロポーズさせてくれと言われて、ベルはジェラールを抱きしめ返して「はい。」と答えた。

 

 

 

 

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 最終更新日 2016/01/31

 最終更新日 2016/12/25