イヴはテラスで夜風に当たりながら、月を眺めていた。

「そっか、本当に婚約することになったんだね。」

はぁ、と大きくため息をつく。

「彼女こそ、ってそう思ったんだけどなぁ。」

「ザンネンね。」

カーテンの近くに立っていたパメラが、そっと慰めの言葉を吐いた。
他の人間が聞いたら、感情がこもっていないパメラの言葉は、慣れたものからしてみれば、十分に気持ちがこもっている。

「僕の運命の相手は、彼女じゃなかったってだけだよ。」

まだそんなことを言っていたのね、とパメラは呆れのこもったため息をついた。

「パメラはあると思う?真実の愛。言葉や見た目、財産や地位に歪められたものでない、普遍的な、究極の愛。魂で感じる、運命……。」

「そうね‥‥それがあるなら、ムーディーなレストランや、ステキなドレスはすべて無意味ね。」

イヴはふふ、と笑って月を見上げた。

「ドレスを作るときね、僕はいつもこの月を見上げていた。彼女の横顔を思い浮かべながら。彼女は、まるで月のようだ。儚くて、清らかで……手に掴むことのできない月の光をドレスにのせるにはどうしたらいいのか、ずっと考えていた。」

「あなたのドレスは素晴らしいわ。」

「うん、ありがとう。」

ドレスが出来た瞬間に、彼女への気持ちも、少し楽になったんだ。
あぁ、これできりがついた、ってね。

イヴは少し首を傾げて、泣き笑いの表情を浮かべた。

 

 

 

 

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 最終更新日 2016/01/31

 最終更新日 2016/12/25